船渠長協会とは
船渠長協会とは
目的
事業
(1)海技に関する研究及び調査
(2)船渠長技術並びに船渠に関する調査及び研究
(3)海事に関する学術の調査研究
(4)講演会及び研究会議との開催
(5)会誌の発行及び図書の出版
(6)その他本会の目的達成のために必用な事業
船渠長とは
【船渠長(ドックマスター)とは】
「船渠」とは「造船所で船(艦)を造り又は修繕するところ」で別名「ドック(DOCK)」である。
「船渠」の「長」が船渠長であり、いいかえれば、「ドック」の「マスター」がドックマスターである。
「マスター」とは「船長=キャプテン」を指す。
要約すれば造船所の船長と言ったらよいだろうか。
船渠長もドックマスターも同じ職種の人間を造船所によって呼び方が違うだけである。
造船所に所属し、造船所の関連海面において造船所が扱う船舶等を操船する者を言う。
なぜ造船所に船長がいるのであろうか。
造船所は船を作るだけではなく、定期点検又は修繕でも船が入ってくる。
造船所構内で船を移動する場合、本船船長には構内の特殊事情が分からないため、造船所所属の船長が代わって操船することになる。構内は私有地であるから、私有地で自動車を動かすのに運転免許証が要らないのと同じように、海技免状は要らないのであるが、操船を行った経験が必要となる。海技免状を持っていればなお良いことになる。そこで船長経験者等が必要になってくる。
船はオーダーメードによって造船所で造られるが、注文者に引き渡す前には、性能の確認が必要となる。そのために構外(主に日本沿海)に出て試運転が必要となる。引き渡される前の船は造船所の持ち物であり、まだ本船の乗組員というものがおらず、造船所所属の人間で動かすことになるが、その場合でも船舶職員法上の職員が必要になる。そのために海技免状所持者が必要となり、船長が要ることになる。
【ドックマスターの名称】
「船渠」という用語は明治の造船業の初期の段階から使用されている。「船渠」は「船(艦)を造り又は修繕するところ。DOCK」と説明され、「渠」という文字は、「水を引くミゾのこと。」
船渠長の熟語は漢和辞典には見当たらない。この用語は、船渠工場で執務する「船長」として「長」を加えて「船渠長」としたものと推定される。
ドックマスター=DOCKMASTERは、明治40年ころすでに香港のドックで使用されていた。DOCKMASTERの語は研究社の新英和大辞典によれば「泊渠現場主任、乾渠現場主任」と訳されている。これは英国における港湾管理者(日本で言えば港湾局)の組織上の名称で、その最上級職はDOCKING MANAGER、その下にHARBOUR MASTER、そしてその下にDOCK MASTERがいて港湾管理をしている。英国では日本のドックマスターの操船業務は水先人が行っている。造船所の仕事をするときはSHIPYARD PILOTと呼ばれ、普通水先人組合に属している。わが国において、何時頃から、どうして本来のSHIPYARD PILOTの名称がDOCKMASTERと称されるようになったか分からないが、DOCKYARDに所属するMASTER(船長)とすれば船渠長という用語に対比して共通し納得できる名称である。いずれにしても「ドックマスター」はわが国の造船界、海運界に定着した名称である。
【ドックマスターの業務(所属会社により違いはあるが主な業務をあげた)】
船舶の運航に関する業務
進水関係業務
海上運転業務
修繕船運航業務
工場における職制管理の業務
海務関係、船渠関係の職制管理
船舶の係留保全管理
【ドックマスターになるには】
造船所では大型船の海上試運転ができる海技免状の取得のための乗船履歴がつけられないため、ドックマスターは必ずいったん海運会社に入社して乗船履歴をつけ、順を追って上級免状を取得した後造船所に入社することになる。海技者として一通りの海上経験を積み最高の免状一級海技士(航海)を取得するには略10年を要し、ドックマスターになる年齢は早くとも34~35歳となる。
造船所のドックマスターになるには二つの道がある。
その一つは、海運会社で船長を経験した後入社する場合と、もう一つは、前述のように所要の海技免状を取得した後船長経験無しに入社する場合であるが、いずれにしても専任ドックマスターとしての主業務は、進水、造船所周辺の操船、海上試運転等の船舶運航等であり、略各社とも共通している。